
話題になったクラファンキーボード「FMV Keyboard X」を買って死ぬほど後悔した理由
本記事は編集部の個人的な感想です。製品のハードウェアそのものの出来や、他の支援者の満足度を否定するものではありません。
⚡ 3行まとめ
- 目標の7,491%にあたる約7,492万円を集めた富士通の磁気スイッチキーボードが、配送遅延のうえ、キー割り当ての変更も0.1mm刻みのアクチュエーション調整も使えないまま
- ようやく公開された専用アプリは詳細設定がマウスのみ対応、しかもWindows 11専用で、Macではファームウェア更新すらできない
- さらに出荷済みの個体には接続方式の識別不具合があり、支援者自身にファームウェア更新と再ペアリングを要求している
富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の「FMV Keyboard X」は、GREEN FUNDINGで2,921人から74,919,827円を集めた話題のキーボードです。目標金額100万円に対して7,491%という、国内のPC周辺機器としては異例の数字でした。
磁気スイッチ、ラピッドトリガー、0.1mm刻みのアクチュエーション調整と、スペックだけ見れば仕事&FPS兼用としても申し分ありません。ただ、支援してから半年経った今の状況は、率直に言って擁護しづらいものです。
📅 何が起きたのか
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年4月 | クラウドファンディング開始。キー割り当て変更は「今後、専用アプリ(Windows向け)の提供により対応を予定」と明記 |
| 6月12日 | プロジェクト終了。2,921人・74,919,827円(目標の7,491%) |
| 当初の予定 | 2026年9月末までに配送予定 |
| 10月上旬 | 最終発送。予定から遅延 |
| 10月22日 | 一般販売を発表。実売価格は3万円弱 |
| 10月23日 | FMV Accessory App公開。ただしキー割り当て変更は「後日公開予定」のまま |

🗝️ 半年待って、まだキーが割り当てられない
キー割り当ての変更ができないこと自体は、実はクラファンページにも書いてありました。「今後、専用アプリの提供により対応を予定しています」と。つまり支援者は、その「今後」を信じて金を出したわけです。
そして4月の開始から数えて半年、プロジェクト終了から4ヶ月以上が経った10月23日、ようやくアプリが公開されました。内容は接続管理とファームウェアアップデート。肝心のカスタマイズについては、公式の案内でこう書かれています。
「キー割り当ての変更など、一部のカスタマイズ機能は後日公開予定です。」
「後日」が4ヶ月続いた先に出てきたのが、さらなる「後日公開予定」でした。手元に製品はあるのに、買った理由の一部がまだ使えない状態が続きます。

🖱️ 詳細設定が使えるのは、なぜかマウスだけ
FMV Accessory Appは、キーボードと同時に発表された「FMV Mouse X」にも対応しています。そして報道によれば、現時点で詳細な設定ができるのはマウスのみとされています。
7,492万円を集めて先に世に出たのはキーボードのはずですが、ソフト面で先に完成しているのは後から出たマウスのほう、ということになります。支援者としては納得しづらい順番でしょう。
実際、編集部の環境でもアプリからキーボードに対してできるのはファームウェアの更新だけで、設定項目そのものが存在しませんでした。

💻 Mac対応を謳いながら、設定アプリはWindows 11専用
FMV Keyboard Xは、接続対応OSとしてWindows 11、macOS 13以降、iOS/iPadOS 17以降、Android 13以降、ChromeOSを挙げています。キートップの刻印もWindowsとMacの両方を想定した設計です。
ところが肝心のFMV Accessory Appは、公式の案内にある通りWindows 11専用。Windows 10もmacOSも対象外です。
つまりMacユーザーは、ファームウェアの更新ができません。後述する不具合対応のためだけに、Windows 11機を借りてくるという話になります。マルチデバイス対応を売りにした製品としては、かなり厳しい構成です。
🔍 アクチュエーション切り替えは一応できる、ただし気づけない
フォローしておくと、アクチュエーションポイントの切り替えそのものはアプリなしでできます。マニュアルによればFn+Deleteで、「おすすめ設定→深め設定→浅め設定→おすすめ設定」の順に3段階で切り替わる仕様です。
問題は、それを知る手段が実質マニュアルしかないことです。しかも現在どの設定になっているかは、Escキーのランプが緑に何回点滅したかで見分けます。
- 1回点滅:おすすめ設定
- 2回点滅:深め設定
- 3回点滅:浅め設定
数あるFnキー機能の一覧に、他と同じ扱いで並べて書かれているだけです。磁気スイッチキーボードを買う人間がいちばん触りたい設定が、この扱いで良かったのかとは思います。
なお本体で切り替えられるのはこの3段階のプリセットまでです。クラファンで打ち出していた0.1mm刻みの調整については、実機とアプリで確認した限り、現時点では本体からもアプリからも設定できません。スペック表に書かれているだけで、どこにも入口がない状態です。
🔧 出荷済みの個体に不具合、対応は支援者任せ
同じアプリの案内では、クラファンで届いた個体について接続方式ごとに機器の識別情報が異なるという事象が報告されています。有線・Bluetooth・USBレシーバーを切り替えると、同じキーボードが別のデバイスとして表示されるというものです。
対応としては、キーボードとUSBレシーバーの両方のファームウェアを更新し、そのうえで再ペアリングが必要とされています。しかも注意書きには、片方だけ更新した状態でペアリングすると正常に接続できない場合がある、とあります。
出荷前に潰しておいてほしい類の問題を、届いた後にユーザーの手作業で解消させる形になっています。
⚖️ 公平に見て、擁護できる点
一応書いておくと、価格面の優位は実在しました。クラファンの価格は22,870円から26,730円で、一般販売の想定実売は3万円弱(税別)。早期支援者ほど安く買えた構図自体は守られています。
配送の遅れも、9月末予定が10月上旬ですから、クラウドファンディングとしては軽微な部類です。これ単体なら文句を言うほどのものではありません。
ハードウェアそのものの評価も悪くありません。慣れるまで打鍵ミスが起きるという評価はあるものの、静音性や打鍵感については好意的な意見も複数出ており、「モノは悪くないが、ソフトが追いついていない」というのが実態に近いはずです。

💢 それでも納得できないところ
結局のところ、引っかかるのは「順番」です。
- 未完成であることを承知で、先に金を払ったのが支援者である
- その支援者に届いた製品は、約束された機能が欠けたままである
- その状態のまま一般販売が始まり、店頭で買う人は完成を待てばよくなった
- 先に詳細設定が整ったのは、クラファンを経ていないマウスのほうだった
磁気スイッチにラピッドトリガー、0.1mm刻みのアクチュエーション、キー配置。このスペックを選ぶ理由は、突き詰めれば「自分に合わせて詰められること」です。その詰める手段が半年経っても揃っていないのであれば、スペック表の数字は額縁に入った絵と変わりません。
7,491%という数字は、富士通というブランドと、キーボードに本気で金を出す層の期待が噛み合った結果だと思います。だからこそ、その期待の回収がここまで後回しにされているのが残念です。
ハードは評価されているだけに、惜しいという一言に尽きます。
キー割り当て機能が実装された時点で、この記事の評価は喜んで撤回したいところです。

参照:GREEN FUNDING「FMV Keyboard X」プロジェクトページ、FCCL「FMV Accessory App公開およびファームウェアアップデートのお願い」、ITmedia PC USER(2026年10月22日)





