
CORSAIRとAimlabsが「方向別感度」を補正する新技術PureVectorを発表、マウス本体にエイムの癖を保存する仕組み
⚡ 3行まとめ
- CORSAIRとAimlabsが共同開発した方向ごとに感度を補正する技術「PureVector」と、搭載マウス6モデルが登場
- Aimlabs上で約5分のキャリブレーションを行うと、方向別の感度がマウスのファームウェアに保存され、常駐アプリなしで全ゲームに適用される
- メーカー発表ではエイム区間を最大81ms短縮。ただしこれは射撃全体ではなくエイムフェーズのみの数値である点に注意が必要
CORSAIRがAimlabsとの共同開発による新技術「PureVector」と、これを搭載する「SABRE v3 PRO PureVector」シリーズを発表しました。DPIとゲーム内感度という従来の2つの数値ではなく、プレイヤーが方向ごとにどう手を動かしているかを計測して感度を調整するという、これまでのゲーミングマウスにはなかったアプローチです。
📐 そもそも「方向別感度」とは何か
従来のDPIとゲーム内感度は、どの方向に動かしても同じ比率でカーソルを動かします。しかし人間の手は、体から離す方向・体に引き寄せる方向・体を横切る方向でそれぞれ動き方が異なり、速度も精度も方向によって差が出ます。
CORSAIRの解説によれば、相性の良い方向ではカーソルがほぼ真っ直ぐターゲットに届く一方、そうでない方向では行き過ぎてから戻す(オーバーシュートと補正)動きが発生し、その補正が1射撃ごとに時間を積み上げていくとしています。
Aimlabs側の研究で示されたとされる2つの性質
- 方向の偏りは個人ごとに形が違う:プロの設定をそのまま真似ても、それは他人の手に合わせた数値でしかない
- 同じ人の中では一貫している:タスクやゲームをまたいでも同じ傾向が出るため、一度計測すれば補正に使える
PureVectorは特許取得済みのアルゴリズムと、Aimlabsで収集された40億件超のデータセットをベースに構築されたと説明されています。
左が「感度が前提としている動き」、右が「実際のエイム挙動」。CORSAIRはこの差が補正時間を生むとしています(画像:CORSAIR)
⏱️ 「最大81ms短縮」はどこが縮むのか
今回の発表で目を引く数字が「エイム速度を最大81ms改善、33%向上」ですが、この33%が指しているのは射撃全体ではありません。CORSAIRは射撃を3つのフェーズに分けて説明しています。
- 検知と判断:敵を見つけて反応を決めるまで。マウスが動く前の段階で、ハードウェアよりプレイヤーの知覚と反応に依存する
- エイム:カーソルをターゲットに乗せる移動と補正。3つの中で最も時間がかかる区間で、PureVectorが対象とするのはここ
- クリック:クリックが認識されるまで。スイッチの応答速度に依存し、3つの中では最も短い
CORSAIRが示した射撃1回の内訳(合計525ms)
245ms
220ms
60ms
赤いエイム区間のうち最大81msが短縮されるという説明です。
つまり合計約525msの射撃のうちエイム区間が81ms縮み、全体では約444msになるという計算です。81msはエイム区間の約3分の1にあたる一方、射撃全体で見ると約15%にとどまります。同社自身も「33%という数字はエイムフェーズのみを指し、射撃全体の時間ではない」と明記しています。
なお、フェーズごとの時間配分を示したグラフについては、CORSAIR側が「形を示すための例示であり実測データではない」と注記しています。数値の扱いには注意が必要です。
📊 ベータテストでのスコア変化
ベータテストでは、Aimlabsの「SpiderShot Pro」という同一タスクで、スキル帯ごとのスコア変化が計測されたとのことです。
| スキル帯 | 平均スコア改善 |
|---|---|
| プロプレイヤー | +8% |
| 上級者 | +12% |
| 初心者 | +30% |
適用前(左)は方向によって着弾の偏りが出ており、適用後(右)は8方向が揃った形になるという図(画像:CORSAIR)
全スキル帯で改善が見られた一方、伸び幅は伸びしろの大きさに沿った形で、初心者が最も大きく、プロは平均8%にとどまっています。なおCORSAIRは「エイム速度(ミリ秒)とスコア改善(%)は別の指標であり、足し合わせたり直接比較したりするものではない」としており、いずれも平均値または上限値であるため個人差がある点も明記されています。
🔧 実際の設定手順
CORSAIRは手順の解説ページも公開しています。所要時間はキャリブレーション本体が約5分で、事前準備を含めるともう少しかかる想定です。
必要なもの
- SABRE v3 PRO PureVectorシリーズ本体とワイヤレスレシーバー(どちらも最新ファームウェア)
- USB-Cケーブルと、CORSAIR Web Hubが動作するブラウザ
- SteamとAimlabs、およびAimlabsアカウント(キャリブレーションに必須)
- 自分のゲーム内DPI・ゲーム内感度、マウスパッドのサイズ、持ち方の情報
手順
- ファームウェアを更新する:USB-Cで接続し、CORSAIR Firmware Update Utilityからレシーバーとマウスをそれぞれ更新する
- Web HubでPureVectorを開く:マウスを選択してDPIメニューからゲームで使っているDPIステージを選び、PureVectorパネルの「Open Aimlabs」をクリックする
- Aimlabsにサインインする:Steam経由でインストールし、アカウントでサインインする
- Mouselabsを開く:上部メニューからMouselabsを選び、「Start calibrating」をクリックする
- 設問に答える:気になっているエイムの問題、持ち方(パーム・クロー・フィンガー)、フリック時に動かす部位(手首・指・腕・肩)、マウスパッドのサイズ、現在のマウスと感度・DPIを入力する
- SpiderShotを5ラウンド行う:1ラウンド1分。終了ごとに結果を確認して次へ進む
- 保存する:「Calibration complete」表示後に「Done」を押すと、マウスのファームウェアにデータが書き込まれる
Web HubでDPIステージを選び、PureVectorパネルからAimlabsを起動します(画像:CORSAIR)
Aimlabs内のMouselabsタブから計測を開始します(画像:CORSAIR)
完了後はPureVectorタブで8方向のBefore/Afterを確認できます。Afterグラフが埋まるには、さらに5ラウンド以上のプレイが必要とされています(画像:CORSAIR)
注意しておきたい制約
- キャリブレーションできるDPIステージは1つだけで、設定後は他のDPIステージが無効になる(手動で再有効化はできるが、PureVectorは適用されない)
- 別のDPIで使いたい場合は、一度キャリブレーションを削除してからDPIステージを選び直して再計測する必要がある
- 持ち方・マウスパッド・DPI・ゲーム内感度を変えたときや、上達して方向の偏りが変わったときは再キャリブレーションが推奨されている
保存後はAimlabsを閉じてよく、常駐アプリも動きません。設定はマウス内に残るため、何もインストールされていないLAN会場のPCでもそのまま機能するとされています。
⚖️ 「エイムアシストでは」という疑問について
方向ごとに感度を変えるという性質上、補助機能ではないかという見方も出てきそうなところですが、CORSAIRは「プレイヤーの代わりに狙うものではない」「バックグラウンドで何も動かない」「プレイ中にリアルタイムで入力を調整するものでもない」と説明しています。
あくまで方向別に分解された感度設定がマウス内に保存されているだけで、計測するのはエイムが着地しやすい位置の傾向であり、プレイヤーがどこを狙うかを変えるものではない、という位置づけです。なお大会やリーグでの取り扱いについては、現時点で公表されている情報はありません。
🖱️ SABRE v3 PRO PureVector シリーズ
シェル素材3種。各素材に左右対称とERGOが用意されます(製品画像:CORSAIR)
シェル素材3種それぞれに左右対称とERGO(右手専用)が用意された、合計6モデル構成です。PureVectorのキャリブレーションは全モデル共通で、基本性能も共通となっています。
| モデル | 形状 | 素材 | 重量 | 米国価格 |
|---|---|---|---|---|
| ULTRALIGHT | 左右対称 | ABS | 37g | 179.99ドル |
| ULTRALIGHT ERGO | ERGO | ABS | 41g | 179.99ドル |
| MG | 左右対称 | マグネシウム合金 | 49g | 199.99ドル |
| MG ERGO | ERGO | マグネシウム合金 | 55g | 199.99ドル |
| CF | 左右対称 | カーボンファイバー | 48g | 229.99ドル |
| CF ERGO | ERGO | カーボンファイバー | 54g | 229.99ドル |
全モデル共通スペック
- センサー:CORSAIR MARKSMAN X(最大42,000DPI / 800IPS / 70G)
- ポーリングレート:最大8,000Hz(有線・ワイヤレスとも対応)
- スイッチ:光学式(1億クリック)、クリック遅延は平均0.25ms
- 接続:2.4GHzワイヤレスおよびUSB-C有線。MG・CFはBluetooth 6.0にも対応
- バッテリー:ULTRALIGHT系が最大140時間(1,000Hz時)/ 25時間(8,000Hz時)、MG・CF系が最大200時間 / 31時間
- 保証:2年
CFモデルはキャリーケースが付属し、CORSAIR直販のみでの取り扱いとされています。国内価格については、本稿執筆時点で公式の案内を確認できていません。
「プロの設定をコピーする」という定番のアプローチに対し、自分の手を計測して合わせにいくという逆方向の提案になっています。
数値はいずれもメーカー発表のベータテスト結果であり、第三者による検証が出てくるかが今後の焦点となりそうです。






